NPO法人徳之島虹の会所属
神奈川県横浜市出身。父方の先祖が島内南西部にある集落を開拓したパイオニアだったこともあり、7年前に徳之島へ移住。徳之島の豊かな自然に魅せられ、世界の宝となった島を子どもたちに大切な宝物として引き継いでもらうためエコツアーガイドに。現在は主に奇岩・史跡・遺跡ツアーを含めた様々なコースを案内し、今年から認定ガイドとして活躍中。また、東京にある社会人向けの大学講座(基礎マーケティング)の添削講師でもある。
今回は「徳之島固有の奇岩&史跡ツアー」をご案内します。岩石採集するなら日本一と言われるほど地質が多様で、その景観はダイナミックであり繊細。奇岩や史跡を巡り、ともに育まれてきた人と生き物の営みを学んでみましょう!
認定ガイドとは「奄美群島の自然・文化について深い知識を有し、来訪者に安全で質の高い体験を提供するとともに、地域の環境保全に責任を持つガイド」として、奄美群島エコツーリズム推進協議会が認定したプロフェッショナルなガイドです。徳之島エコツアーガイド連絡協議会に所属し、1年以上の実務実績がある/救命救急法の技量を有する/奄美群島の自然・文化・ガイド技術・安全管理術に関する認定講習を修了している、など合計9つの要件を満たす必要があります。
徳之島エコツアーガイド連絡協議会太古にユーラシア大陸から分離し形成された徳之島は豊かな自然環境が色濃く残り、トクノシマカンアオイといった固有植物をはじめ、アマミノクロウサギなど国の特別天然記念物に指定されている希少生物が数多く生息しています。生物多様性が注目される一方で、実は奄美群島のなかでも特に多様な地層が入り混じり、“いのち”の根底を支え続けている台地、史跡が広がっています。海岸部分に広がる琉球石灰岩のおかげで、平地が広がり農業が発展してきたことはもちろん、天城町に位置する日本最大級の海底鍾乳洞を筆頭に石灰岩からなる鍾乳洞が点在するため、カルシウムを多く含む良質な山水を人々は摂取してきました。動植物だけでなく、島民の暮らしを育んできた地質の世界を覗いてみましょう。
学術的に貴重なメランジ堆積物を知る
「地質標本の島」と評されるなかでも、伊仙町の犬田布の海岸では日本でも数少ないとされ学術的に貴重なメランジ堆積物が見られます。異なる堆積物が地殻変動や地震などで混ざり合って造られた地質体が、1億年以上もの時間をかけて海底から姿を現した地層のことで、県の天然記念物に指定されています。また、辺りには徳之島の天然塩「ましゅ」が作られるきっかけである、地形を利活用した塩田跡が広がり、自然からの小さな発見が豊かな食文化に繋がっていると実感できます。
国指定史跡・カムィヤキの森を散策する
続いて、犬田布海岸から内陸部へ車で20分ほど走り、国指定史跡のカムィヤキの森へ。照葉樹が広がり国立公園内でもあるカムィヤキの森には、中世の琉球弧地域で最も規模の大きい窯跡として注目を集めている「南島系陶質土器・カムィヤキの窯跡」を見学できます。古来より、島人は陶器を形作る粘土には森の基盤となっている花崗岩を、火力(薪)には自生しているアマミアラカシやスダジイなど照葉樹を使い、器を作ってきました。「自然・文化・歴史をコンパクトに体験できるという全国でも非常に珍しいスポットです」と、寛山さんが語るように、体験時間は約2時間と気軽に散策しながら、樹木や地質を利用した窯跡、それにともなう文化の発展の仕方を学ぶことができます。
1億年の歳月をかけて表れたという奥深い地質の世界。想像すれば太古の世界にタイムスリップしたかのよう。
希少動物が多く生息している奄美群島でも、トクノシマトゲネズミやアマミノクロウサギなど、多くの国指定天然記念物が生息する徳之島。また、島内には「鹿児島のすぐれた自然」や「特定植物群落」などにおいて、合計20件の植物群落が選定されています。
常 加奈子さん(つね かなこ・旅友Tokunoshima)
https://www.tabitomo-tokunoshima.biz/
生まれも育ちも徳之島。
島を離れ、久しぶりに帰ると海底が灰色になっていたことにショックを受け、サンゴについて知りたくなり沖縄へ。水族館でサンゴ調査や生き物解説などに携わり、そこで海・川・森と、循環する自然の営みに改めて感動し、その中で生かされていることを実感。現在は徳之島で、自身が感じ、学んだ島の魅力を人に伝え、人と考え、共に楽しめるようガイドとしても腕を磨いています。
ギネスブックで長寿世界一に認定された方など、100歳以上の方が多い“長寿の島”徳之島。長生きの秘訣は、豊かな自然の中で永く育まれてきた人の暮らしにあると、常さんは言います。「多様な生き物が数多く残っている自然豊かな島なんです。だからその中で育った人たちは、たくましいんです。」
沖縄でサンゴを学んだ後、島に帰ってきた常さんは、この島を全然知らなかった自分に気が付いたのだと言います。沖縄で出会った自然の魅力を徳之島でも感じ、「もっと生まれ育った徳之島を知りたい」と思ったことをきっかけに、海や川、山や森など様々な場所に足を運んでいます。
エネルギーに満ち溢れたご神木「ガジュマル」をはじめ、イタジイやオキナワワウラジロガシなど、昔から脈々と育まれてきた自然や、北部に広がる海岸の景観、一目でパッと分かる魅力はもちろん、一目見ただけでは気付くことのできない自然の奥深さをガイドとして伝えていきたいと、常さんは語ります。
ここ徳之島には「聖地」と言われ、神が宿ると伝えられているスポットが多く存在しています。それを島口で「テラ(照らすの意味)」と言い、昔から神様がいる場所として大切にされてきたため開発を免れたり、先祖の方が採らずにいたことで、今もなお、貴重な動植物が多く残っているのだと言います。
最後に常さんに、徳之島に訪れた人にどんな気持ちで帰ってほしいか尋ねると、こう話してくれました。「徳之島にしかない魅力を感じて帰って欲しいと思います。そのためには、私たちガイドの“腕”が必要だと思います。豊かな自然はもちろん、人も温かく面白いんですよ。それぞれの魅力を感じて帰っていただけたら嬉しいです。」