手付かずの自然が色濃く残る徳之島。島の東側の太平洋では花崗岩などからなる複雑な海岸線が広がり、西側の東シナ海では波の浸食によってできた海食崖や波食台など自然が形作る奇石が見られます。この個性的な島を取り巻く海の中を覗けば、南の海特有の多様な海洋生物が生息しており、アオウミガメ、コブシメ、サビウツボをはじめ、冬になると北から回遊してくるザトウクジラなど見どころだらけです。知る人ぞ知る、圧倒的スケール感のある美しい海が広がっています。
そんな徳之島では、真っ白なサンゴ砂の浜辺がウミガメの上陸地となっており、6月から9月にかけて産卵や孵化のシーズンとなります。近海には年間を通して日本一といっても過言ではないほど数多く生息しているんだとか。『アルファ・アイランド徳之島』が行う体験ダイビングに参加して向かった先は、島の西部にある秋利神(あきりがみ)漁港エリア。もちろん海のコンデション次第ではあるけれど、水深10mほどの岩礁でエサを食べるアオウミガメや色とりどりの熱帯魚が目の前に広がります。ウミガメを「追いかけない・触らない」をダイバー同士で徹底し、自然の生態に寄り添うことで長い島の歴史と共に育まれてきた豊かな海の世界を堪能できます。
ガイドの伊藤正司さんは、国内だけでなく、流氷から赤道直下と数々の海を潜り歩いてきたプロフェッショナル。地形を知り尽くし、装具の付け方から潜り方までイチからレクチャーしてくれるので、ビギナーも安心して楽しめます。「南北にそびえたつ山々のおかげで風が遮られ、潜れない日はほとんどない。その日の風向きで入水ポイントを選べるほどダイビングに適していますし、潜れば多様な地形と美しい生き物の世界が広がっています」と伊藤さんが語るように、漁港から少し外に出ただけで、ダイナミックな地形と生きものが織りなす絶景を味わえるのはこの地ならでは。多様な海洋生物が息づく世界自然遺産の海で、一生の思い出となるダイビングをぜひお楽しみください。
ユーラシア大陸から切り離された徳之島は、奄美群島の中でも特に多様な地層が混在し、独自の地形や生態系そして人々の暮らしを育んできました。例えば、奄美大島とは異なり、徳之島の南部にかけては琉球石灰岩で形成されているため、平地が広がり農業が発展。昭和期には銅山の採掘が盛んだった歴史があるほど鉄分を多く含む地質もあり、そこに住む生き物にも影響を与えていると考えられています。長年にわたる浸食により“彫刻”されできあがった奇岩や断崖が多く見られるこの島で、地層と地質を知り、島の成り立ちから生物多様性について考えてみませんか。
『NPO法人徳之島虹の会』に所属する認定エコツアーガイドの寛山一郎さんの案内でまず向かう先は、国立公園に指定されている北西端にあるムシロ瀬。藁やイグサで編んだ敷物(ムシロ)のような景観が名の由来で、辺り一面に巨大な花崗岩が広がります。直方体方向の割れ目を意味する「方状節理(ほうじょうせつり)」が特徴で、全国各地でもこれほどまでダイナミックにむき出しになっているスポットはあまりなく、まさに奇観。真っ青な海と白い花崗岩のコントラストも絵画のような美しさでとして奄美十景の1つに数えられます。約200 メートルの歩道が整備されており、岩場の中を容易に散策できるため、直接岩に触れたり、近くで自生しているシャリンバイやクサトベラを鑑賞するのも楽しみのひとつです。
次に、車を走らせ30分ほどで到着する黒畦海岸では、綺麗な丸い穴が開いた奇岩群を鑑賞することができます。この丸い穴はポットホールと呼ばれ、波によって運ばれてきた岩が長い年月をかけて岩盤を回転しながら削り続け空洞が拡大し、見事なほど丸い穴になるのだそうです。大きなものでは直径50cmになり、徳之島町の天然記念物に指定されています。「アマミノクロウサギは200万年前から生息していますが、例えばムシロ瀬の岩石が形成されたのは6000万年以上前とケタ外れに長い年月がかかっています」と寛山さんが語るように、生物多様性の土台になっている土地の成り立ちを知ることで、壮大なロマンを体感できるでしょう。
愛犬の散歩は経験あれども、牛の散歩となると想像がつかない。町や田園をコンパクトカーと同じくらい巨大な牛がのっしのっしと歩くさまは、“闘牛の島”と形容される徳之島ならではの光景です。琉球王朝や薩摩藩の影響を受けた徳之島では、自分たちの暮らしを少しでも愉もうとする“なくさみ”という独自の文化が形成されました。シマ唄、ふり茶、追い込み漁そして闘牛もその文化の一つであり、小さな喜びに寄り添う精神が、今日でも島民の暮らしに溶け込み息づいています。
徳之島で定期的に開催される闘牛大会では、誇りと名誉をかけます。その大会に向けて「おさんぽ」は重要なトレーニングメニューです。『結や-MUSUBIYA-』が主催するツアーに参加すると、牛舎で闘牛の歴史やブラッシングを学び、大きい体だと1トンを超えるほどたくましい牛の隣を歩きながら、その息遣いを間近で体感することができます。迫力はありつつも、人間への信頼がわかる穏やかな表情がなんとも愛らしく、牛主との強い絆を実感するでしょう。夕暮れどきに、円弧のビーチが美しい花徳浜を目指し牛舎からのんびり歩くことで、牛と共にある町の雰囲気や手付かずの自然を体感できるのも醍醐味です。
闘牛と聞いてパッと頭に思い浮かべるのは、角と体がぶつかり合い勝敗を決めるエキサイティングな場面のイメージですが、「大会が開催される365分の1日のために、共にトレーニングを積みながら、日々愛情をたっぷり注ぎ、丁寧に育てていく−そんな364日の日常にこそ、闘牛という素晴らしい文化が根付いている」と、ガイドの福本慶太さんは教えてくれます。日々の暮らしのなかで家族同然の牛にかける想い、世話をしながら近所の人同士で晩酌している風景、近所の高校生が朝の5時から牛舎に手伝いにくる毎日。牛を中心に徳之島の人々の心が結びつき、熱を帯びていく営みこそが“牛なくさみ”なのかもしれません。
太古に地殻変動によりユーラシア大陸から分離し形成された徳之島は、大陸から取り残された生きものたちが環境に適応しながら独自の進化を遂げ、特別天然記念物のアマミノクロウサギやトクノシマトゲネズミを筆頭に、多様な生きものが育まれています。環境省のレッドリストによれば、徳之島を含む奄美群島には、鳥類や爬虫類、哺乳類など全国の1〜3割もの絶滅危惧種が存在しています。また動物だけでなく、日本国土面積でみると僅か0.1%も満たないほど小さな島のなかで約1,000種類の自生植物が覆われているほか、亜熱帯気候に属しながら多雨林が発達するなど、世界でも珍しい自然環境を有しています。
まさに“生きものの宝庫”である徳之島で『NPO法人徳之島虹の会』のナイトハイクに参加すれば、希少な生き物との出会いや間近での観察など世界自然遺産に登録された貴重な環境を体感することができます。日が落ちてすっかり周囲も暗くなったら、奄美群島認定エコツアーガイド同行が条件となっている世界自然遺産エリアへゲートを超えて出発です。まっくらな森の中を歩くと、徳之島固有種のオビトカゲモドキやトクノシマトゲネズミ、奄美大島と徳之島にしか生息しないアマミハナサキガエル、その他リュウキュウイノシシの子供など、数多くの生き物がお出迎え。またガイドの政武文さんは「いま見たトクノシマトゲネズミは、なぜジャンプしながら移動するのでしょうか?」と、生きものの特性や習性に基づいたクイズを随時出してくれるため、姿を見るだけではなく、知識として理解が深まります。日によっては、ハブなども遭遇しますが、認定ガイドの指示で静かに安全に観察できます。外灯はなく懐中電灯のみで歩くうっそうとした森のなかは、静けさとともに感覚が研ぎ澄まされ、冒険心でいっぱい。小さな発見に一喜一憂しながら緩やかな林道を登りきると、待っていたかのごとく頭上一面に天の川が広がっているでしょう。徳之島に息づく生きものについて総合的に学べ、共生する自然にたっぷり触れられるナイトハイクツアー。合計3時間と充実した散策を終え戻った今なら政さんからのクイズに「ハブに捕まらないようにするため」と、自信を持って答えることができます。
リュウキュウアカショウビン※写真提供:NPO法人 徳之島虹の会
手付かずの自然が色濃く残る徳之島。島の東側の太平洋では花崗岩などからなる複雑な海岸線が広がり、西側の東シナ海では波の浸食によってできた海食崖や波食台など自然が形作る奇石が見られます。この個性的な島を取り巻く海の中を覗けば、南の海特有の多様な海洋生物が生息しており、アオウミガメ、コブシメ、サビウツボをはじめ、冬になると北から回遊してくるザトウクジラなど見どころだらけです。知る人ぞ知る、圧倒的スケール感のある美しい海が広がっています。
そんな徳之島では、真っ白なサンゴ砂の浜辺がウミガメの上陸地となっており、6月から9月にかけて産卵や孵化のシーズンとなります。近海には年間を通して日本一といっても過言ではないほど数多く生息しているんだとか。『アルファ・アイランド徳之島』が行う体験ダイビングに参加して向かった先は、島の西部にある秋利神(あきりがみ)漁港エリア。もちろん海のコンデション次第ではあるけれど、水深10mほどの岩礁でエサを食べるアオウミガメや色とりどりの熱帯魚が目の前に広がります。ウミガメを「追いかけない・触らない」をダイバー同士で徹底し、自然の生態に寄り添うことで長い島の歴史と共に育まれてきた豊かな海の世界を堪能できます。
ガイドの伊藤正司さんは、国内だけでなく、流氷から赤道直下と数々の海を潜り歩いてきたプロフェッショナル。地形を知り尽くし、装具の付け方から潜り方までイチからレクチャーしてくれるので、ビギナーも安心して楽しめます。「南北にそびえたつ山々のおかげで風が遮られ、潜れない日はほとんどない。その日の風向きで入水ポイントを選べるほどダイビングに適していますし、潜れば多様な地形と美しい生き物の世界が広がっています」と伊藤さんが語るように、漁港から少し外に出ただけで、ダイナミックな地形と生きものが織りなす絶景を味わえるのはこの地ならでは。多様な海洋生物が息づく世界自然遺産の海で、一生の思い出となるダイビングをぜひお楽しみください。
ユーラシア大陸から切り離された徳之島は、奄美群島の中でも特に多様な地層が混在し、独自の地形や生態系そして人々の暮らしを育んできました。例えば、奄美大島とは異なり、徳之島の南部にかけては琉球石灰岩で形成されているため、平地が広がり農業が発展。昭和期には銅山の採掘が盛んだった歴史があるほど鉄分を多く含む地質もあり、そこに住む生き物にも影響を与えていると考えられています。長年にわたる浸食により“彫刻”されできあがった奇岩や断崖が多く見られるこの島で、地層と地質を知り、島の成り立ちから生物多様性について考えてみませんか。
『NPO法人徳之島虹の会』に所属する認定エコツアーガイドの寛山一郎さんの案内でまず向かう先は、国立公園に指定されている北西端にあるムシロ瀬。藁やイグサで編んだ敷物(ムシロ)のような景観が名の由来で、辺り一面に巨大な花崗岩が広がります。直方体方向の割れ目を意味する「方状節理(ほうじょうせつり)」が特徴で、全国各地でもこれほどまでダイナミックにむき出しになっているスポットはあまりなく、まさに奇観。
真っ青な海と白い花崗岩のコントラストも絵画のような美しさでとして奄美十景の1つに数えられます。約200 メートルの歩道が整備されており、岩場の中を容易に散策できるため、直接岩に触れたり、近くで自生しているシャリンバイやクサトベラを鑑賞するのも楽しみのひとつです。
次に、車を走らせ30分ほどで到着する黒畦海岸では、綺麗な丸い穴が開いた奇岩群を鑑賞することができます。この丸い穴はポットホールと呼ばれ、波によって運ばれてきた岩が長い年月をかけて岩盤を回転しながら削り続け空洞が拡大し、見事なほど丸い穴になるのだそうです。大きなものでは直径50cmになり、徳之島町の天然記念物に指定されています。「アマミノクロウサギは200万年前から生息していますが、例えばムシロ瀬の岩石が形成されたのは6000万年以上前とケタ外れに長い年月がかかっています」と寛山さんが語るように、生物多様性の土台になっている土地の成り立ちを知ることで、壮大なロマンを体感できるでしょう。
愛犬の散歩は経験あれども、牛の散歩となると想像がつかない。町や田園をコンパクトカーと同じくらい巨大な牛がのっしのっしと歩くさまは、“闘牛の島”と形容される徳之島ならではの光景です。琉球王朝や薩摩藩の影響を受けた徳之島では、自分たちの暮らしを少しでも愉もうとする“なくさみ”という独自の文化が形成されました。シマ唄、ふり茶、追い込み漁そして闘牛もその文化の一つであり、小さな喜びに寄り添う精神が、今日でも島民の暮らしに溶け込み息づいています。
徳之島で定期的に開催される闘牛大会では、誇りと名誉をかけます。その大会に向けて「おさんぽ」は重要なトレーニングメニューです。『結や-MUSUBIYA-』が主催するツアーに参加すると、牛舎で闘牛の歴史やブラッシングを学び、大きい体だと1トンを超えるほどたくましい牛の隣を歩きながら、その息遣いを間近で体感することができます。迫力はありつつも、人間への信頼がわかる穏やかな表情がなんとも愛らしく、牛主との強い絆を実感するでしょう。夕暮れどきに、円弧のビーチが美しい花徳浜を目指し牛舎からのんびり歩くことで、牛と共にある町の雰囲気や手付かずの自然を体感できるのも醍醐味です。
闘牛と聞いてパッと頭に思い浮かべるのは、角と体がぶつかり合い勝敗を決めるエキサイティングな場面のイメージですが、「大会が開催される365分の1日のために、共にトレーニングを積みながら、日々愛情をたっぷり注ぎ、丁寧に育てていく−そんな364日の日常にこそ、闘牛という素晴らしい文化が根付いている」と、ガイドの福本慶太さんは教えてくれます。日々の暮らしのなかで家族同然の牛にかける想い、世話をしながら近所の人同士で晩酌している風景、近所の高校生が朝の5時から牛舎に手伝いにくる毎日。牛を中心に徳之島の人々の心が結びつき、熱を帯びていく営みこそが“牛なくさみ”なのかもしれません。
太古に地殻変動によりユーラシア大陸から分離し形成された徳之島は、大陸から取り残された生きものたちが環境に適応しながら独自の進化を遂げ、特別天然記念物のアマミノクロウサギやトクノシマトゲネズミを筆頭に、多様な生きものが育まれています。環境省のレッドリストによれば、徳之島を含む奄美群島には、鳥類や爬虫類、哺乳類など全国の1〜3割もの絶滅危惧種が存在しています。また動物だけでなく、日本国土面積でみると僅か0.1%も満たないほど小さな島のなかで約1,000種類の自生植物が覆われているほか、亜熱帯気候に属しながら多雨林が発達するなど、世界でも珍しい自然環境を有しています。
まさに“生きものの宝庫”である徳之島で『NPO法人徳之島虹の会』のナイトハイクに参加すれば、希少な生き物との出会いや間近での観察など世界自然遺産に登録された貴重な環境を体感することができます。日が落ちてすっかり周囲も暗くなったら、奄美群島認定エコツアーガイド同行が条件となっている世界自然遺産エリアへゲートを超えて出発です。まっくらな森の中を歩くと、徳之島固有種のオビトカゲモドキやトクノシマトゲネズミ、奄美大島と徳之島にしか生息しないアマミハナサキガエル、その他リュウキュウイノシシの子供など、数多くの生き物がお出迎え。
またガイドの政武文さんは「いま見たトクノシマトゲネズミは、なぜジャンプしながら移動するのでしょうか?」と、生きものの特性や習性に基づいたクイズを随時出してくれるため、姿を見るだけではなく、知識として理解が深まります。日によっては、ハブなども遭遇しますが、認定ガイドの指示で静かに安全に観察できます。外灯はなく懐中電灯のみで歩くうっそうとした森のなかは、静けさとともに感覚が研ぎ澄まされ、冒険心でいっぱい。小さな発見に一喜一憂しながら緩やかな林道を登りきると、待っていたかのごとく頭上一面に天の川が広がっているでしょう。
徳之島に息づく生きものについて総合的に学べ、共生する自然にたっぷり触れられるナイトハイクツアー。合計3時間と充実した散策を終え戻った今なら政さんからのクイズに「ハブに捕まらないようにするため」と、自信を持って答えることができます。