スローガイド奄美所属
瀬戸内町出身。幼少期より豊かな自然で遊んできた経験を活かしたいと考え、2006年にカヌー・インストラクターの道へ。3年ほど携わるなか、島の自然や歴史を改めて勉強し始めたのがきっかけで、カメラ片手に独学でフィールドワークをするように。現在は認定ガイドとして「スローガイド奄美」に所属し、国内最大規模の亜熱帯の森「金作原」の散策ツアーを中心に幅広く活躍中。世界自然遺産の地の魅力を伝えるために、新しい発見を探して散策するのが日課。
今回は「金作原散策ツアー」をご案内します。温暖な気候と近海の黒潮による豊富な雨量の環境で形成された“太古の自然”が色濃く残っている金作原は、迫力あるシダ植物・ヒカゲヘゴや希少な動物が数多く生息するエリア。独特の生態系が織りなすエネルギッシュなパワーをぜひ感じてほしいです。
認定ガイドとは「奄美群島の自然・文化について深い知識を有し、来訪者に安全で質の高い体験を提供するとともに、地域の環境保全に責任を持つガイド」として、奄美群島エコツーリズム推進協議会が認定したプロフェッショナルなガイドです。奄美大島エコツアーガイド連絡協議会に所属し、1年以上の実務実績がある/救命救急法の技量を有する/奄美群島の自然・文化・ガイド技術・安全管理術に関する認定講習を修了している、など合計9つの要件を満たす必要があります。
奄美大島エコツアーガイド連絡協議会地殻変動によりユーラシア大陸から分離した結果、豊かな自然が残り独自の生態系を築き上げた奄美大島で、今もなお太古の姿が色濃く残っている金作原。温暖な気候と豊富な雨がもたらす環境により国内最大規模の亜熱帯広葉樹が自生している金作原では、貴重な自然を保護するために「特別保護区」から先を散策する場合には認定エコツアーガイドの同行が必要です。標高約300mのため夏場でも涼しく、面積は約125ヘクタールと広大。観察できる植物は約200種類と数多く生息しています。頭上までドームのように隙間なく木々で覆われている森のなか、悠久の時間をかけて共存・進化してきた希少な生きものたちの営みをじっくり観察してみましょう。
アップダウンのない、なだらかな散策路を歩くと、環境省のレッドリストに掲載されている絶滅危惧種のカクチョウランや、生きた化石と称される巨大なシダ植物・ヒカゲヘゴなど、南国らしくダイナミックに躍動している植物たちが目の前に広がります。「ほらみて! これがヒカゲヘゴです。シダ植物だけでも奄美大島で200種類近く自生しているんですよ」と、富岡さんはひとつひとつiPadに収集された膨大な動植物データをもとに、丁寧に解説してくれるので、島の生態系についての理解が深まります。
往復約2kmの折り返し地点では、樹齢約200年のどっしりとした大木・オキナワウロジロガシがお出迎え。一般的な根ではなく、うねうねと隆起した有機的な板根(ばんこん)が特徴的で、原始的な佇まいから森のシンボルツリーとして愛されています。ほかにも、鳥とそっくりな不思議な鳴きかたをするオオシマゼミ、天然記念物のアマミハナサキガエルなど奄美大島を代表する生きものを数多く見つけることができ、半日足らずでグッと奄美大島をとりまく“生物の多様性”を実感することができました。「次回は日本一美しいカエルと言われる、アマミイシカワガエルが見られるといいですね」。そう富岡さんがいうように、偶然でドラマチックな出会いに満ちた金作原で、五感を駆使して生きものたちの声に耳を傾けるひとときこそ、金作原が創る豊かな風景なのかもしれません。
金作原原生林は国有林として一般車両の通行は禁止となっています。こうした取り組みが生態系を守っているのです。
海の方が注目されがちな奄美大島の一番の魅力は、実は森だと越間さんは言います。高湿度に恵まれるこの土地は、400種類以上の動植物と出会える貴重な場所。大きな木や滝があるわけではないからこそ、詳しいガイドの案内を受けながら奥深さを知り、魅力を知ることができる島です。
越間 茂雄さん(こしま しげお・Deep Amami 代表)
2007年よりガイド歴11年(2018年現在) 奄美市名瀬(なぜ)生まれ。
幼少の頃より、祖父から 奄美の自然の豊かさを実際のフィールドで教えられ、以来
動植物に興味を持つ。
ツアーは「ゆっくりのんびり」「もっとアクティブに」「更にディープな奄美へ」など、希望に沿ったテーマで行なっている。また、加計呂麻島周遊といった広範囲のガイド案内も可。
奄美大島は、島の多くを森が占めている自然溢れる島。400種類以上の動植物や、マングローブ林、アマミノクロウサギなどの絶滅危惧種が多く存在するなど、世界に誇れる壮大な自然を保有する場所です。そんな自然溢れる環境は、語り・守り継ぐ人々があってこそ。尊さを知ることで感じる魅力を是非実感してください。
越間さんにガイドになった理由を聞くと、こう答えてくれました。「家の周りの自然が大好きで、小さい頃は森の中でずっと遊んでいました。島に帰ってきた時に、“ここでよく遊んだよなぁ”、“じいさんが自然の魅力を教えてくれたなぁ”と思い出しました。その時、自然の魅力を伝える仕事をしていきたいと改めて思ったんです。」
越間さんは奄美に帰った際、“奄美の森を自分も知りつつ、お客さんに森の自然を知ってもらいたい”と考えました。「毎日森の中で遊んでるうちに、こんなに自然豊かな島はないのでは、と思いました。こんな所で生まれ育ったということを自慢に思いますし、自信を持って皆さんに紹介できます。」
400種類以上動植物が生息するこの地は、自然が好きな人にとって出会いの場所。なかでも、越間さんが個人的に大好きなのは「音」なのだそう。耳を澄ませてみると、鳥のさえずりや葉っぱのかすれる音、その音ひとつひとつが、奄美でしか聴くことができない、五感に残る思い出となるでしょう。
ここ奄美は自然を楽しむには最適な場所。種類豊富な動植物はもちろん、平坦な林道・山道は体力に自信のない人でも楽しむことができるのです。ですが、個人で訪れると「何も見つけられなかった。」という人もいるかもしれません。訪れた人に“気付き”を多く見つけてもらうのがガイドの使命なのだと越間さんは言います。