国内最大規模の亜熱帯照葉樹林が広がり、固有種や絶滅危惧種が驚くほど豊富に生息・生育する生物多様性から、“いのちのゆりかご”としても知られる奄美大島。そんな島内で、世界自然遺産登録をきっかけに、より多くの人々に自然環境の素晴らしさを共感してもらうための総合拠点として2022年7月に開館した『奄美大島世界遺産センター』。シイの森を中心に渓流やマングローブ林に息づく生きものを観察できる再現フィールド、島の成り立ちや森を楽しむためのルールを学ぶことができる展示コーナーなど見どころ満載です。
はるか大昔、ユーラシア大陸と地続きだった奄美大島は、地殻変動や海面の上昇・下降を繰り返すなかで大陸から分離・隔離されて今に至ります。それによって形づくられた特異な生態系のなかで、もともとユーラシア大陸に生息していた生きもの達は、島の環境に適応し独自の進化をとげてきました。例えば絶滅危惧種のアマミノクロウサギは、ハブの脅威を避けるために周囲を見渡せる場所でフンをしたり、同じく絶滅危惧種のアマミトゲネズミは50cmほど垂直に飛び上がりハブの攻撃をかわします。センター内では、そんな動物や植物を観察スコープで見つけることができ、ひとつひとつ丁寧に説明文が表示されるので、島の生態系と自然環境を詳しく学ぶことができます。
常時フィールド内では、奄美大島でしか見ることのできないダイナミックな風景をとじこめた4つのミニシアターが上映され、日の出から真夜中までの1日を30分間で知ることができます。春・夏・秋・冬の季節に合わせた映像を上映しているので、訪れる時期で異なる風景を楽しめることも魅力のひとつです。ときおり雨のシーンが流れるほどリアリティがあり、俯瞰してみることで、島の生態系と密接する奄美大島ならではの自然環境をより体感することができます。また、環境に配慮した商品が揃うミュージアムショップも併設しているため、お土産選びにもぴったりです。
一度は耳にしたことがあるであろう、ペルシャ絨毯と並ぶ世界三大織物のひとつに「大島紬」があります。奄美大島の龍郷町を発祥とする絹の手織物のことで、1300年以上の歴史を誇り、美しい光沢を放ち、しなやかで軽く、シワになりにくい特徴があります。大島紬はできあがるまでに30を超える工程があり、島内にいる職人たちの手作業によって分業制で製作され、龍郷柄・秋名バラ・西郷柄などの伝統柄から、各工房が独自に図案化したものまで、数えきれないほどデザインがあります。島の草花や生活用具などをモチーフにしたモダンな着物は、深い黒に仕上げる奄美大島特有の染色技術と緻密な織りの結晶であり、国内外から高い評価を受けています。
奄美大島には現在も50を超える専門工房があるなか、全工程を一連で手がけている『奄美大島紬村』では、実際の作業場として稼働している様子を見学できます。泥染めをはじめ、絹糸にカラフルな色付けを施す加工作業、図案をもとに織り機で仕上げていく製織など、それぞれの工程をスタッフが丁寧に説明をしてくれます。スタッフの越間教裕さんは、「着物は民族衣装という枠から飛び出し、ファッションとして昇華させていきたい。そうすることで、世界に日本の技術力の高さが伝わるはず」と、想いを語ります。細かい柄で1年間も製作時間を要することを教えてもらい、熟練した職人の手の動きを間近で観察してみれば、奄美大島紬の世界にグッと惹き込まれていくでしょう。
工房を構える約1万5千坪の広大な庭園では、亜熱帯植物や野生動物の観察を楽しめます。羽を休めにルリカケスも訪れることから、実は野鳥愛好家の間で観察スポットとしても人気なのです。生命のもつ力強さとモノづくりの繊細さを同時に感じながら、園内でのんびり散策するも良し、大島紬やアパレル、雑貨などが販売されている館でお土産品を選ぶも良し、時間をたっぷり確保して訪れるのがオススメです。
古来より、奄美の島々に住む人々である島人(しまんちゅ)は月の満ち欠け、星の動き、渡り鳥の飛来など自然の兆しを読んで暮らしてきました。決して手懐けることのできない自然と向き合い、祈り、身を委ねる。新暦が一般的になった今日でも、奄美では旧暦に基づいた多くの祭事や行事が行われ、人々は儀式を大切にしています。海の彼方にある豊穣の国・ネリヤカナヤから神々がやってくるため海はとても神聖なところだと考えられていることや、集落の繁栄を願い神と交信する役割を担った女性“ノロ”を信仰するのも代表例です。
そんな独特の風土を学び、体験できる施設『鹿児島県奄美パーク』では、豊穣と安寧を願って行われるノロの神祭り、伝統行事の正月マンカイなど、奄美大島の1年を記した展示パネルを見学できます。ほか、ホール内ではアシャゲと呼ばれる祭場の実物大模型を筆頭に、海の道・テーマウォール・シマの道・森の道の4つのゾーンごとに、奄美の歴史を包括した風習や民俗を体感できます。月に2〜3回、後世に伝えていこうと、地元の人々がシマ唄や踊りなど伝統文化を披露するイベントも開催されており、それも見どころのひとつです。
別館にある、早熟の天才と謳われた日本画家・田中一村の絵画が展示されている『田中一村記念美術館』も必見です。大きく3つのセクションに分かれ、南画家として脚光を浴びた東京時代、自分の表現を模索した千葉時代、そして新しい絵の境地を開いた奄美時代と、田中一村の人生を辿りながら、じっくりと作品を鑑賞できます。館内では約500点におよぶ作品数を誇り、80点を常設展示、年に4回入替えが行われます。晩年の名作「アダンの海辺」、「不喰芋とソテツ」、「オオアカゲラとルリカケス」など、島の動植物をモチーフにビビットな色使いで描かれる作品は、どれも生々しいほど強い生命力に満ちあふれています。
国内最大規模の亜熱帯照葉樹林が広がり、固有種や絶滅危惧種が驚くほど豊富に生息・生育する生物多様性から、“いのちのゆりかご”としても知られる奄美大島。そんな島内で、世界自然遺産登録をきっかけに、より多くの人々に自然環境の素晴らしさを共感してもらうための総合拠点として2022年7月に開館した『奄美大島世界遺産センター』。シイの森を中心に渓流やマングローブ林に息づく生きものを観察できる再現フィールド、島の成り立ちや森を楽しむためのルールを学ぶことができる展示コーナーなど見どころ満載です。
はるか大昔、ユーラシア大陸と地続きだった奄美大島は、地殻変動や海面の上昇・下降を繰り返すなかで大陸から分離・隔離されて今に至ります。それによって形づくられた特異な生態系のなかで、もともとユーラシア大陸に生息していた生きもの達は、島の環境に適応し独自の進化をとげてきました。例えば絶滅危惧種のアマミノクロウサギは、ハブの脅威を避けるために周囲を見渡せる場所でフンをしたり、同じく絶滅危惧種のアマミトゲネズミは50cmほど垂直に飛び上がりハブの攻撃をかわします。センター内では、そんな動物や植物を観察スコープで見つけることができ、ひとつひとつ丁寧に説明文が表示されるので、島の生態系と自然環境を詳しく学ぶことができます。
常時フィールド内では、奄美大島でしか見ることのできないダイナミックな風景をとじこめた4つのミニシアターが上映され、日の出から真夜中までの1日を30分間で知ることができます。春・夏・秋・冬の季節に合わせた映像を上映しているので、訪れる時期で異なる風景を楽しめることも魅力のひとつです。ときおり雨のシーンが流れるほどリアリティがあり、俯瞰してみることで、島の生態系と密接する奄美大島ならではの自然環境をより体感することができます。また、環境に配慮した商品が揃うミュージアムショップも併設しているため、お土産選びにもぴったりです。
一度は耳にしたことがあるであろう、ペルシャ絨毯と並ぶ世界三大織物のひとつに「大島紬」があります。奄美大島の龍郷町を発祥とする絹の手織物のことで、1300年以上の歴史を誇り、美しい光沢を放ち、しなやかで軽く、シワになりにくい特徴があります。
大島紬はできあがるまでに30を超える工程があり、島内にいる職人たちの手作業によって分業制で製作され、龍郷柄・秋名バラ・西郷柄などの伝統柄から、各工房が独自に図案化したものまで、数えきれないほどデザインがあります。島の草花や生活用具などをモチーフにしたモダンな着物は、深い黒に仕上げる奄美大島特有の染色技術と緻密な織りの結晶であり、国内外から高い評価を受けています。
奄美大島には現在も50を超える専門工房があるなか、全工程を一連で手がけている『奄美大島紬村』では、実際の作業場として稼働している様子を見学できます。泥染めをはじめ、絹糸にカラフルな色付けを施す加工作業、図案をもとに織り機で仕上げていく製織など、それぞれの工程をスタッフが丁寧に説明をしてくれます。スタッフの越間教裕さんは、「着物は民族衣装という枠から飛び出し、ファッションとして昇華させていきたい。そうすることで、世界に日本の技術力の高さが伝わるはず」と、想いを語ります。細かい柄で1年間も製作時間を要することを教えてもらい、熟練した職人の手の動きを間近で観察してみれば、奄美大島紬の世界にグッと惹き込まれていくでしょう。
工房を構える約1万5千坪の広大な庭園では、亜熱帯植物や野生動物の観察を楽しめます。羽を休めにルリカケスも訪れることから、実は野鳥愛好家の間で観察スポットとしても人気なのです。生命のもつ力強さとモノづくりの繊細さを同時に感じながら、園内でのんびり散策するも良し、大島紬やアパレル、雑貨などが販売されている館でお土産品を選ぶも良し、時間をたっぷり確保して訪れるのがオススメです。
古来より、奄美の島々に住む人々である島人(しまんちゅ)は月の満ち欠け、星の動き、渡り鳥の飛来など自然の兆しを読んで暮らしてきました。決して手懐けることのできない自然と向き合い、祈り、身を委ねる。新暦が一般的になった今日でも、奄美では旧暦に基づいた多くの祭事や行事が行われ、人々は儀式を大切にしています。海の彼方にある豊穣の国・ネリヤカナヤから神々がやってくるため海はとても神聖なところだと考えられていることや、集落の繁栄を願い神と交信する役割を担った女性“ノロ”を信仰するのも代表例です。
そんな独特の風土を学び、体験できる施設『鹿児島県奄美パーク』では、豊穣と安寧を願って行われるノロの神祭り、伝統行事の正月マンカイなど、奄美大島の1年を記した展示パネルを見学できます。ほか、ホール内ではアシャゲと呼ばれる祭場の実物大模型を筆頭に、海の道・テーマウォール・シマの道・森の道の4つのゾーンごとに、奄美の歴史を包括した風習や民俗を体感できます。月に2〜3回、後世に伝えていこうと、地元の人々がシマ唄や踊りなど伝統文化を披露するイベントも開催されており、それも見どころのひとつです。
別館にある、早熟の天才と謳われた日本画家・田中一村の絵画が展示されている『田中一村記念美術館』も必見です。大きく3つのセクションに分かれ、南画家として脚光を浴びた東京時代、自分の表現を模索した千葉時代、そして新しい絵の境地を開いた奄美時代と、田中一村の人生を辿りながら、じっくりと作品を鑑賞できます。館内では約500点におよぶ作品数を誇り、80点を常設展示、年に4回入替えが行われます。晩年の名作「アダンの海辺」、「不喰芋とソテツ」、「オオアカゲラとルリカケス」など、島の動植物をモチーフにビビットな色使いで描かれる作品は、どれも生々しいほど強い生命力に満ちあふれています。