「おおぎみまるごとツーリズム協会」が実施しているサイクリング体験は、大宜味村の自然や歴史、文化が学べるガイド付きのツアーで、近年海外からも注目を集めています。自転車を使って移動するため環境にやさしく、スムーズに走行できるEVサイクルも導入しています。爽快なサイクリングとのんびり楽しむ集落散策を組み合わせた体験は、集落内のディープなスポットを巡ることで地域の魅力を肌で感じることができます。今回は芭蕉布で有名な大宜味村の「喜如嘉(きじょか)集落コース」を自転車で巡ります。糸芭蕉が揺れるのどかな集落で、今まで知らなかった新しい沖縄の魅力に出会えるかもしれません。地元出身のガイド、稲福凜さんの楽しい話に耳を傾けながらサイクリングへ出発しましょう!
訪れたのは「ヒンバ森」。近くに自転車を停めて風情あふれる鳥居をくぐります。南国の植物に囲まれた石段を上ると、見晴らしの良い高台が広がっています。ここは古くから拝所として人々が祈りを捧げてきた場所。集落を眺めながら、かつて干潟だったという土地の成り立ちや、旧暦の4月に行われる「アブシバレー(畦払い)」という虫除けの儀式の話題など、地域の歴史や行事について稲福さんがわかりやすく教えてくれます。個人ではなかなか足を運ばない場所を訪れることができるのもガイドツアーならでは。しばらく散策したら、地域のコンビニ的な役割をもつ「喜如嘉共同売店」へ。どこか懐かしい佇まいが魅力的です。「ここは近くに住んでいるみなさんが集まってゆんたく(おしゃべり)する大切なコミュニティでもあります。沖縄を舞台にした朝の連続テレビ小説『ちむどんどん』のロケ地にもなりました」と笑う稲福さん。店内では、大宜味村産のカラキ(オキナワニッケイ/シナモン)を使ったお茶や飴も販売しています。
サイクリングを楽しみながら「喜如嘉ターブク」へ。ターブクとは田んぼのことですが、稲作ではなくオクラレルカやフトイといった花卉を栽培しています。オクラレルカの見頃は春で、4月には一帯がむらさき色に染まります。真っ直ぐに伸びたあぜ道を自転車で走っていると、喜如嘉の素朴な風景に心が癒されます。ツアーのハイライトとも言えるのが、亜熱帯の植物が生い茂る「喜如嘉の七滝」。水の流れる筋が7回変わることから名付けられたこの滝は、琉球王国に関する貴重な地誌資料「琉球国由来記」に名を残す重要な場所です。自転車で入り口となる鳥居の前まで行けるため、神秘的な滝を間近に感じられるはず。集落の拝所や田畑、滝まで自転車で巡れるとは驚きです。自転車を使った観光なら集落内の通りも無理なく移動できますが、ここはあくまでも人々が暮らしているエリア。大きな声で騒いだり、スピードの出し過ぎは控え、集落の人たちとの会話を楽しみながら、よんなーよんなー(ゆっくりゆっくり)楽しみましょう。
沖縄本島最大、約11ヘクタールものマングローブが広がる東村・慶佐次(げさし)川。東京ドーム2個分程度の面積を誇るヒルギ林やそこに生息する生き物をカヤックで観察できるのが「慶佐次川マングローブツアー」です。今回は、東村観光推進協議会からご紹介いただいたガイド歴10年以上のベテラン、「やんばる案内人Tida-Smile」の妹尾望さんの案内でカヤックを楽しみます。出発前にまずは漕ぎ方をレクチャー。パドルの使い方や体重のかけ方など基本操作を教えてもらった後、いよいよカヤックに乗り込んで漕ぎ出します。本州と比べて高い山がない沖縄の川は、傾斜が緩やかで水量が少ないという特徴があります。河口域は海の潮の満ち引きの影響を受けやすく、満ち潮の際には海水が川に入り込んで来ることで逆流現象が起こります。そのため、慶佐次川でも河口から上流へと向かって穏やかな流れが生まれ、水中にパドルを入れるとまるで背中を押されたようにスーッと進んでいきます。初心者でも安心して操作できるので、肩の力を抜いて息を合わせながら水上散策を楽しんでください。
「このエリアで最もよく見られる生き物がカニです。夏に繁殖のために現れるミナミオカガニをはじめ、シオマネキやキノボリベンケイガニなど10種類以上が生息しています」と言う妹尾さん。ヒルギに近付き、複雑な根の間でじっとしているカニたちの姿を観察するのも楽しいひととき。また、カヤックを漕いでいると、ふと川面に茶色の泡がたくさん浮かんでいることに気付きます。「潮が満ちてくると、干潟にある多数のカニの巣穴が水没します。その際に巣穴の空気がブクブクと出てくるんですが、同時に川底の土を巻き込んで空気の泡が生まれます。土の細かな粒子に守られることで泡が割れにくくなるため、壊れずに川面に浮かぶんです」と詳しく教えてくれました。また、川の両側に広がるヒルギ林は圧巻の一言。無数の根が横に張り出すヤエヤマヒルギは東村が北限地です。慶佐次川ではほかにも赤い花をつけるオヒルギ、樹高が低いメヒルギなどの計3種類のヒルギが観察できます。川辺にはカワセミやサギといった水鳥たちも姿を見せることがあるそう。近くの森からオオシマゼミの「ヒョンヒョンヒョン…」という鳴き声も聞こえ、自然の中で過ごす喜びを全身で感じられるツアーです。
上流まで来たら、ヒルギが密集し枝葉を伸ばしている「木のトンネル」を通ってスタート地点へ戻ります。川幅がやや狭くなっているため、より近くでヒルギ林を眺めることができ、臨場感のある景観が楽しめます。迫り来る枝葉を避けながらトンネルをくぐり抜ける体験はとても貴重。冐険気分を味わってみてください。「林の奥にこんもりとした土山がいくつもありますが、あの中にはオキナワアナジャコが生息しています。慶佐次川はさまざまな生き物が観察できるので、マングローブが生み出す景観や生き物の観察を通して東村の魅力を感じてもらえたら嬉しいです」。妹尾さんが語ってくれたように、東村・慶佐次川はダイナミックな生物多様性の宝庫。マングローブカヤック体験を通して、日常では体験できない貴重な風景に出会ってみませんか?
世界自然遺産エリアでもあるやんばる3村で実施している「保全体験型ナイトツアーAKISAMIYO(アキサミヨ)」は、夜の森を散策するだけではなく、参加者が専用GPS機器と調査票を使って“環境モニタリング調査”を行うのが特徴です。今回ガイドをお願いした妹尾望さんは、やんばるの森や川をはじめとしたエコツアーのエキスパート。それぞれのエリアで異なる自然環境を把握し、参加者に自然保護の重要性や希少生物の生態をレクチャーしてくれます。「2011年から北部エリアではじまった林道パトロールをきっかけに、やんばるの魅力や課題を多くの人と共有し、保全活動に取り組む人を増やしたいという思いからこのツアーが生まれました」と話す妹尾さん。既存の自然体験から一歩踏み込んだ「AKISAMIYO」では体験前にガイダンスを行います。やんばるの自然の特色や課題をクイズ形式で学び、これからはじまるツアーの心構えを共有したら、ツアー車のサステナ号に乗り込んでいよいよ出発! 今回は外来動植物対策の最前線を体感できる「東コース」を巡ります。
夜道を走り、闇に包まれた東村の森へと到着。希少生物保護の観点から具体的なツアー場所は参加者にも秘密です。近くに生息する生き物への配慮から、調査ポイントまでサステナ号でゆっくり進みます。その時、前の通りに小さなリュウキュウカジカガエルを発見! 懐中電灯を持って調査をスタートします。「まわりの環境によって体の色が変化するのがこのカエルの特徴です」という妹尾さんの説明を聞きながら、GPSと調査票に生き物の名前や発見した時間を記録。その後はロードキルを防ぐためにカエルを道路の側へ逃します。やんばるの自然環境をチェックするこのツアーの参加者も生き物への配慮は欠かせません。夜の森ではさまざまな生き物が観察できますが、調査対象は希少生物だけではありません。外来生物やノイヌ・ノネコ、密猟につながる違法なトラップ、ゴミの不法投棄、希少種のロードキルなど、多角的な視点からモニタリングを行うのが特徴です。外来種や密猟問題にも詳しい妹尾さんのガイドを通して世界自然遺産エリアにもまだ多くの課題があり、一人ひとりの地道な取り組みが必要だと感じます。
サステナ号はさらに奥深くへ進み、世界自然遺産エリアへと到着しました。「徒歩で調査するエリアに入る前に、ウートートー(合掌)をしましょう」と言う妹尾さん。参加者みんなで山の神様と生き物たちに祈りを捧げ、暗い森を歩いて調査を行います。葉っぱにしがみついて寝ているカナヘビの赤ちゃんや、キノボリトカゲ、ヤマナメクジ、アオミオカタニシ、ヤンバルマイマイなど多くの生き物を発見。日本一美しいカエルと言われている絶滅危惧種のオキナワイシカワガエルにも出会うことができました。広げた手の平のような葉をもつフカノキは、かつて地域の人々によってミーカガン(水中メガネ)に加工され、素潜り漁で利用されたそうです。やんばるでは昔も今も自然と人々の暮らしが密接につながっています。ツアー名の「AKISAMIYO(アキサミヨ)」は、沖縄の方言で驚きを表現する言葉。ぜひ、このナイトツアーで得た驚きや感動、発見を持ち帰り、まわりの人たちと共有してみてください。
広大な敷地にコテージやツリーハウスといった宿泊施設を備え、キャンプ場が広がる国頭村森林公園は、沖縄本島最高峰の与那覇岳など山々に囲まれたやんばるの森の玄関口。公園周辺では森林浴や生き物観察など多彩なアクティビティを体験することができますが、日中とは異なる夜のやんばるの魅力を体感したいなら「星空ツアー」がおすすめです。標高約220mに位置する森林公園では、空を近くに感じながら季節の星を眺めることができます。太陽が沈んでしばらくすると、街の灯りから遠く離れた森林公園は近くのものも判別できないほど暗くなり、あたりは静寂に包まれます。ツアーがスタートしたら、星空案内人とともに星見台へ。季節によっては周辺にホタルが飛び交い幻想的な雰囲気です。星見台ではリクライニングチェアに腰掛け、星空案内人の解説に耳を傾けながら神秘的な星の物語を楽しんでください。
「晴れた夜は東西南北に散らばる満天の星を捉えることができます。その迫力と美しさに圧倒されて涙をこぼす参加者もいるほどです」。そう話すのは星空案内人の下地正敏さん。春は金星や南十字座の一部、夏は圧巻の天の川やペルセウス流星群、秋は土星や木星、冬はオリオン座やシリウスといったさまざまな星が姿を現します。季節や天候によって変化する天体ショーは感動の連続。季節ごとに訪れ、自分の目で確かめたくなる魅力にあふれています。「北極星は沖縄の方言で“ニヌファブシ” と呼ばれています。『てぃんさぐぬ花』いう教訓歌にもその名前が出てきますよ」。下地さんによる星の解説も楽しく、時間を忘れてしまいそうです。静かに星を見上げていると、周囲の森から時折「キョキョキョッ…」というヤンバルクイナや「コホーッ、コホーッ!」というリュウキュウコノハズクの鳴き声がすることがあるため、ぜひ耳を澄まして聴いてみてください。
星見台で星を観察したあとは、隣の天文台に移動し高精度の天体望遠鏡で天体観測を楽しみます。立体的に浮かび上がった土星の輪や、サファイアとトパーズに例えられる二重星アルビレオ、ヘルクレス座の球状星団M13、そして赤く輝くさそり座の一等星アンタレスなど、その日、その季節ならではの星と出会うことができます。はるか遠くで輝く天体を観察していると、壮大な宇宙を感じて胸が高鳴るはず。やんばるでの星空観望体験はロマンと感動にあふれています。「自然に手を加えることなく観察できるため、環境負荷が少ない持続可能なアクティビティとして期待されています」と話す下地さん。みなさんもやんばるを訪れた際は星空案内人が誘うツアーに参加して、美しい星空を見上げてみませんか?
「おおぎみまるごとツーリズム協会」が実施しているサイクリング体験は、大宜味村の自然や歴史、文化が学べるガイド付きのツアーで、近年海外からも注目を集めています。自転車を使って移動するため環境にやさしく、スムーズに走行できるEVサイクルも導入しています。爽快なサイクリングとのんびり楽しむ集落散策を組み合わせた体験は、集落内のディープなスポットを巡ることで地域の魅力を肌で感じることができます。今回は芭蕉布で有名な大宜味村の「喜如嘉(きじょか)集落コース」を自転車で巡ります。糸芭蕉が揺れるのどかな集落で、今まで知らなかった新しい沖縄の魅力に出会えるかもしれません。地元出身のガイド、稲福凜さんの楽しい話に耳を傾けながらサイクリングへ出発しましょう!
訪れたのは「ヒンバ森」。近くに自転車を停めて風情あふれる鳥居をくぐります。南国の植物に囲まれた石段を上ると、見晴らしの良い高台が広がっています。ここは古くから拝所として人々が祈りを捧げてきた場所。集落を眺めながら、かつて干潟だったという土地の成り立ちや、旧暦の4月に行われる「アブシバレー(畦払い)」という虫除けの儀式の話題など、地域の歴史や行事について稲福さんがわかりやすく教えてくれます。個人ではなかなか足を運ばない場所を訪れることができるのもガイドツアーならでは。
しばらく散策したら、地域のコンビニ的な役割をもつ「喜如嘉共同売店」へ。どこか懐かしい佇まいが魅力的です。「ここは近くに住んでいるみなさんが集まってゆんたく(おしゃべり)する大切なコミュニティでもあります。沖縄を舞台にした朝の連続テレビ小説『ちむどんどん』のロケ地にもなりました」と笑う稲福さん。店内では、大宜味村産のカラキ(オキナワニッケイ/シナモン)を使ったお茶や飴も販売しています。
サイクリングを楽しみながら「喜如嘉ターブク」へ。ターブクとは田んぼのことですが、稲作ではなくオクラレルカやフトイといった花卉を栽培しています。オクラレルカの見頃は春で、4月には一帯がむらさき色に染まります。真っ直ぐに伸びたあぜ道を自転車で走っていると、喜如嘉の素朴な風景に心が癒されます。
ツアーのハイライトとも言えるのが、亜熱帯の植物が生い茂る「喜如嘉の七滝」。水の流れる筋が7回変わることから名付けられたこの滝は、琉球王国に関する貴重な地誌資料「琉球国由来記」に名を残す重要な場所です。自転車で入り口となる鳥居の前まで行けるため、神秘的な滝を間近に感じられるはず。集落の拝所や田畑、滝まで自転車で巡れるとは驚きです。自転車を使った観光なら集落内の通りも無理なく移動できますが、ここはあくまでも人々が暮らしているエリア。大きな声で騒いだり、スピードの出し過ぎは控え、集落の人たちとの会話を楽しみながら、よんなーよんなー(ゆっくりゆっくり)楽しみましょう。
沖縄本島最大、約11ヘクタールものマングローブが広がる東村・慶佐次(げさし)川。東京ドーム2個分程度の面積を誇るヒルギ林やそこに生息する生き物をカヤックで観察できるのが「慶佐次川マングローブツアー」です。今回は、東村観光推進協議会からご紹介いただいたガイド歴10年以上のベテラン、「やんばる案内人Tida-Smile」の妹尾望さんの案内でカヤックを楽しみます。出発前にまずは漕ぎ方をレクチャー。パドルの使い方や体重のかけ方など基本操作を教えてもらった後、いよいよカヤックに乗り込んで漕ぎ出します。
本州と比べて高い山がない沖縄の川は、傾斜が緩やかで水量が少ないという特徴があります。河口域は海の潮の満ち引きの影響を受けやすく、満ち潮の際には海水が川に入り込んで来ることで逆流現象が起こります。そのため、慶佐次川でも河口から上流へと向かって穏やかな流れが生まれ、水中にパドルを入れるとまるで背中を押されたようにスーッと進んでいきます。初心者でも安心して操作できるので、肩の力を抜いて息を合わせながら水上散策を楽しんでください。
「このエリアで最もよく見られる生き物がカニです。夏に繁殖のために現れるミナミオカガニをはじめ、シオマネキやキノボリベンケイガニなど10種類以上が生息しています」と言う妹尾さん。ヒルギに近付き、複雑な根の間でじっとしているカニたちの姿を観察するのも楽しいひととき。また、カヤックを漕いでいると、ふと川面に茶色の泡がたくさん浮かんでいることに気付きます。「潮が満ちてくると、干潟にある多数のカニの巣穴が水没します。その際に巣穴の空気がブクブクと出てくるんですが、同時に川底の土を巻き込んで空気の泡が生まれます。土の細かな粒子に守られることで泡が割れにくくなるため、壊れずに川面に浮かぶんです」と詳しく教えてくれました。
また、川の両側に広がるヒルギ林は圧巻の一言。無数の根が横に張り出すヤエヤマヒルギは東村が北限地です。慶佐次川ではほかにも赤い花をつけるオヒルギ、樹高が低いメヒルギなどの計3種類のヒルギが観察できます。川辺にはカワセミやサギといった水鳥たちも姿を見せることがあるそう。近くの森からオオシマゼミの「ヒョンヒョンヒョン…」という鳴き声も聞こえ、自然の中で過ごす喜びを全身で感じられるツアーです。
上流まで来たら、ヒルギが密集し枝葉を伸ばしている「木のトンネル」を通ってスタート地点へ戻ります。川幅がやや狭くなっているため、より近くでヒルギ林を眺めることができ、臨場感のある景観が楽しめます。迫り来る枝葉を避けながらトンネルをくぐり抜ける体験はとても貴重。冐険気分を味わってみてください。
「林の奥にこんもりとした土山がいくつもありますが、あの中にはオキナワアナジャコが生息しています。慶佐次川はさまざまな生き物が観察できるので、マングローブが生み出す景観や生き物の観察を通して東村の魅力を感じてもらえたら嬉しいです」。妹尾さんが語ってくれたように、東村・慶佐次川はダイナミックな生物多様性の宝庫。マングローブカヤック体験を通して、日常では体験できない貴重な風景に出会ってみませんか?
世界自然遺産エリアでもあるやんばる3村で実施している「保全体験型ナイトツアーAKISAMIYO(アキサミヨ)」は、夜の森を散策するだけではなく、参加者が専用GPS機器と調査票を使って“環境モニタリング調査”を行うのが特徴です。今回ガイドをお願いした妹尾望さんは、やんばるの森や川をはじめとしたエコツアーのエキスパート。それぞれのエリアで異なる自然環境を把握し、参加者に自然保護の重要性や希少生物の生態をレクチャーしてくれます。「2011年から北部エリアではじまった林道パトロールをきっかけに、やんばるの魅力や課題を多くの人と共有し、保全活動に取り組む人を増やしたいという思いからこのツアーが生まれました」と話す妹尾さん。
既存の自然体験から一歩踏み込んだ「AKISAMIYO」では体験前にガイダンスを行います。やんばるの自然の特色や課題をクイズ形式で学び、これからはじまるツアーの心構えを共有したら、ツアー車のサステナ号に乗り込んでいよいよ出発! 今回は外来動植物対策の最前線を体感できる「東コース」を巡ります。
夜道を走り、闇に包まれた東村の森へと到着。希少生物保護の観点から具体的なツアー場所は参加者にも秘密です。近くに生息する生き物への配慮から、調査ポイントまでサステナ号でゆっくり進みます。その時、前の通りに小さなリュウキュウカジカガエルを発見! 懐中電灯を持って調査をスタートします。「まわりの環境によって体の色が変化するのがこのカエルの特徴です」という妹尾さんの説明を聞きながら、GPSと調査票に生き物の名前や発見した時間を記録。
その後はロードキルを防ぐためにカエルを道路の側へ逃します。やんばるの自然環境をチェックするこのツアーの参加者も生き物への配慮は欠かせません。夜の森ではさまざまな生き物が観察できますが、調査対象は希少生物だけではありません。外来生物やノイヌ・ノネコ、密猟につながる違法なトラップ、ゴミの不法投棄、希少種のロードキルなど、多角的な視点からモニタリングを行うのが特徴です。外来種や密猟問題にも詳しい妹尾さんのガイドを通して世界自然遺産エリアにもまだ多くの課題があり、一人ひとりの地道な取り組みが必要だと感じます。
サステナ号はさらに奥深くへ進み、世界自然遺産エリアへと到着しました。「徒歩で調査するエリアに入る前に、ウートートー(合掌)をしましょう」と言う妹尾さん。参加者みんなで山の神様と生き物たちに祈りを捧げ、暗い森を歩いて調査を行います。葉っぱにしがみついて寝ているカナヘビの赤ちゃんや、キノボリトカゲ、ヤマナメクジ、アオミオカタニシ、ヤンバルマイマイなど多くの生き物を発見。日本一美しいカエルと言われている絶滅危惧種のオキナワイシカワガエルにも出会うことができました。
広げた手の平のような葉をもつフカノキは、かつて地域の人々によってミーカガン(水中メガネ)に加工され、素潜り漁で利用されたそうです。やんばるでは昔も今も自然と人々の暮らしが密接につながっています。ツアー名の「AKISAMIYO(アキサミヨ)」は、沖縄の方言で驚きを表現する言葉。ぜひ、このナイトツアーで得た驚きや感動、発見を持ち帰り、まわりの人たちと共有してみてください。
広大な敷地にコテージやツリーハウスといった宿泊施設を備え、キャンプ場が広がる国頭村森林公園は、沖縄本島最高峰の与那覇岳など山々に囲まれたやんばるの森の玄関口。公園周辺では森林浴や生き物観察など多彩なアクティビティを体験することができますが、日中とは異なる夜のやんばるの魅力を体感したいなら「星空ツアー」がおすすめです。
標高約220mに位置する森林公園では、空を近くに感じながら季節の星を眺めることができます。太陽が沈んでしばらくすると、街の灯りから遠く離れた森林公園は近くのものも判別できないほど暗くなり、あたりは静寂に包まれます。ツアーがスタートしたら、星空案内人とともに星見台へ。季節によっては周辺にホタルが飛び交い幻想的な雰囲気です。星見台ではリクライニングチェアに腰掛け、星空案内人の解説に耳を傾けながら神秘的な星の物語を楽しんでください。
「晴れた夜は東西南北に散らばる満天の星を捉えることができます。その迫力と美しさに圧倒されて涙をこぼす参加者もいるほどです」。そう話すのは星空案内人の下地正敏さん。春は金星や南十字座の一部、夏は圧巻の天の川やペルセウス流星群、秋は土星や木星、冬はオリオン座やシリウスといったさまざまな星が姿を現します。季節や天候によって変化する天体ショーは感動の連続。季節ごとに訪れ、自分の目で確かめたくなる魅力にあふれています。
「北極星は沖縄の方言で“ニヌファブシ” と呼ばれています。『てぃんさぐぬ花』いう教訓歌にもその名前が出てきますよ」。下地さんによる星の解説も楽しく、時間を忘れてしまいそうです。静かに星を見上げていると、周囲の森から時折「キョキョキョッ…」というヤンバルクイナや「コホーッ、コホーッ!」というリュウキュウコノハズクの鳴き声がすることがあるため、ぜひ耳を澄まして聴いてみてください。
星見台で星を観察したあとは、隣の天文台に移動し高精度の天体望遠鏡で天体観測を楽しみます。立体的に浮かび上がった土星の輪や、サファイアとトパーズに例えられる二重星アルビレオ、ヘルクレス座の球状星団M13、そして赤く輝くさそり座の一等星アンタレスなど、その日、その季節ならではの星と出会うことができます。
はるか遠くで輝く天体を観察していると、壮大な宇宙を感じて胸が高鳴るはず。やんばるでの星空観望体験はロマンと感動にあふれています。「自然に手を加えることなく観察できるため、環境負荷が少ない持続可能なアクティビティとして期待されています」と話す下地さん。みなさんもやんばるを訪れた際は星空案内人が誘うツアーに参加して、美しい星空を見上げてみませんか?