旅先で振る舞われるソウルフードを味わうことも旅行の醍醐味。奄美大島では郷土料理「鶏飯(けいはん)」が代表的な料理として親しまれています。この料理は約400年前に薩摩藩の役人をもてなすために島で考案されました。飼育していた貴重な鶏を余すことなく使用することから、庶民には手の届かないほど高級な逸品でしたが、戦後になるとアレンジされていき、瞬く間に大衆に愛される郷土料理へ。今では“おふくろの味”として各家庭で受け継がれ食卓に根付いています。
コッテリとした鶏の旨味こそが、昔ながらの風味だという諸説もありますが、『ひさ倉』の鶏飯ではあっさりしつつも濃厚な旨味が後味に残る味わいを楽しめます。おひつからアツアツのご飯をよそおい、その上に細かく裂いた鶏肉と錦糸卵、しいたけ、ネギ、パパイヤの漬物、たんかんの干し皮、海苔、紅ショウガなどたっぷりの具材をのせ、地鶏のスープを注げばできあがり。ここの鶏飯の決め手は、自家養鶏場で平飼いされた上質な地鶏をじっくり煮出した黄金スープです。鮮度を保つために、注文が入ってから土鍋に移し、提供する直前に醤油や塩で仕上げる徹底ぶりです。お茶漬けのようにスルスルと食べ進めることができるので、ご飯とスープがおかわり自由なのも嬉しいポイントです。
ほかにも「やきとり」や「地鶏手羽」といった鶏肉を中心とした料理が並ぶなか、店主イチオシなのが、さつま若しゃもを調理した「とりさし」です。鹿児島の本土では一般的には皮を炙ったものが提供されますが、『ひさ倉』では鮮度を生かして皮を処理し、そのまま生で提供されます。プリッとした弾力あるモモ肉やむね肉を、薄くスライスした自家製玉ねぎ、生姜やニンニクなどの薬味と一緒に堪能できる一皿です。地元の方々と観光客で賑わう広々とした店内で、鶏飯や新鮮なとりさしを心ゆくまで味わえば、奄美大島の食文化を体験できるきっかけとなるでしょう。
薩摩と沖縄の食文化が交じり合い、独自に形作られた奄美大島の郷土料理。この島を取り囲む海から獲れる豊富な海産物はもとより、香りや旨みが高い島野菜も豊富に使われ、食材そのものの魅力を引き出す料理が特徴です。サッと塩で味付けられた料理から、サトウキビを原料とするミネラルたっぷりな黒糖で深い味わいを引き立てた料理、さらには伝統的な発酵食品であるミキやソテツ味噌まで、日々の食卓には滋養に溢れた料理が並びます。こうした食事文化の影響もあって奄美群島は、百寿者率が全国的にも高いと言われており“長寿の島”として知られています。
名瀬商店街にたたずみ、さまざまな調理方法で“シマジューリ”を提供する『郷土料理かずみ』は、夜な夜な地元の人々が集う憩いの場。代表的な郷土料理の油そうめんはもちろん、ソテツの種子を混ぜて作る伝統味噌・なり味噌で和えたゴーヤチャンプルー、その日に水揚げされた赤うるめの唐揚げ、奄美群島の伝統的な農作物であるハンダマのお浸し、パパイヤの漬物など、さまざまなあらゆる郷土料理を10品以上も堪能できます。特に正月に食べる習わしがある、適当な味加減で塩抜きした豚骨とツワブキの煮物は絶品の一品です。各料理について店員さんが調理方法から説明してくれるので、奄美の食文化を広く知るきっかけになります。
テキパキと厨房で料理を手がける女将の西和美さんはシマ唄の名人。ひとしきり食べたあとには、唄遊びが待っています。だいたい毎晩19時半頃からスタートし、常連の男性が三味線を奏で、お客はチヂンと呼ばれる太鼓を順番に打楽器隊として演奏します。シマ唄を静かに聴くのではなく、徐々に熱気を帯びるグルーヴを感じながら、本来の遊びを体験できます。「毎日料理をして、シマ唄を歌うことが楽しくてしょうがないんです」と、女将さんは言います。地産地消が根付いた奄美大島で郷土料理を味わい、日々のストレスを吹き飛ばすために、いつだって陽気にシマ唄を歌う島人の心を体感すれば、美しさは暮らしの中にあることを実感するはずです。
離島のベストシーズンといえば夏を連想してしまうけど、誰だってひとしきり遊んだあとはサクッと涼みたくなります。島フルーツをふんだんに使用したジェラートを手掛ける『ラフォンテ』では、奄美大島の北部にある自家農園で栽培した無農薬の果実を使用し、その日にキッチンで手作りして販売をしています。ガラス張りの冷凍ケースには、奄美黒糖、マシュ(真塩)、ミルクをはじめ、その時期に収穫できる旬のものがラインナップされており、シングルからトリプルまでのサイズを選ぶことができます。これまで考案したレシピは300種類を以上もあるのだとか。
特に人気なのは、黒糖&マシュ&パッションフルーツのトリプルジェラート。手作りならではのざくざくした食感はもちろん、素朴な甘さと、南の島にきたことを想わせるエクゾチックな酸味が口の中でダイレクトに広がります。店主の泉久美子さんは、2006年にパッションフルーツを育てたのがきっかけで、作物の美味しさを伝えたいという想いからオープンしました。素材から引き出される自然の旨みを最大限活かすため、奄美の温暖な気候を利用し加温することなくビニールハウスで栽培しています。
農園を手掛けているからこそ原材料のフルーツは、色や傷によって流通にのらない規格外品も使用するそうで、たとえば酸味が少し強い場合でも、5〜6種類の砂糖を独自にブレンドしてバランスを調整します。素材を無駄なく使うことはエコな視点からもスグレモノ。「自分たちで汗を流し育てているからこそ、食べ頃を見極めて果実を選ぶことができます」と語るように、トロピカルな素材からあふれ出る自然の風味を生かした格別の味を求めて、今では多くの地元の人々や観光客で賑わう憩いの場となっています。
国や地域の数だけ多種多様なお酒はあれど、その地でしか製造できないものは珍しいものです。まさに秘伝とも言える最たる例が、奄美群島が誇る「黒糖焼酎」です。サトウキビの煮汁をギュッと凝縮したブロック状の黒糖と米麹を原料とする黒糖焼酎が生まれることになったのは、遡ること1953年、アメリカ統治下にあった奄美群島が日本に返還された歴史が深く関係しています。日本の酒税法が適用されると、身の回りにあるサトウキビから作られる黒糖を原料とした蒸留酒は「ラム」に分類され、高い税率が課せられることになります。ただ、このような地理的背景があったこともあり、例外措置として米麹の使用を条件に法律上でも奄美群島でのみ製造が許されるようになったのです。
こうして先人の知恵とワザを紡ぎながら独自に発展した黒糖焼酎は、現在25の蔵元で製造を続けています。「復帰の歴史があったおかげで生まれた奇跡のレシピ」と語るのは『西平酒造』の4代目となる西平せれなさん。代表銘柄である「加那」や「ISLAND」を製造するかたわら、ミュージシャンとしても活動し従業員と音楽隊を結成して、樽で寝かせた古酒にジャズやシマ唄など様々な音楽を聴かせる新たな取り組みを行っています。伝統を守りながらも、ひとつのベストアルバムを作るように多様な黒糖焼酎を造ること。今年で70周年を迎えた黒糖焼酎の未来を担う女性杜氏は、今日も活動を続けています。
全ての蔵元の代表的な銘柄を中心に季節限定のものまで、64種類もの黒糖焼酎がズラリと並ぶのは、島の繁華街“屋仁川”の中心にある『島の居酒屋むちゃかな』。店内の木組みの壁面にライトアップされた黒糖焼酎を眺めれば、つい迷うほど豊富に揃っていますが、はじめの一杯こそ飲みやすいと評判の「加那」のソーダ割りがオススメ。スッキリとした黒糖の甘みが際立つように常圧蒸留で丁寧に仕込まれた逸品です。奄美の方言で“愛しい人”という由来に習って、家族や恋人と舌鼓を打つのも乙です。
旅先で振る舞われるソウルフードを味わうことも旅行の醍醐味。奄美大島では郷土料理「鶏飯(けいはん)」が代表的な料理として親しまれています。この料理は約400年前に薩摩藩の役人をもてなすために島で考案されました。飼育していた貴重な鶏を余すことなく使用することから、庶民には手の届かないほど高級な逸品でしたが、戦後になるとアレンジされていき、瞬く間に大衆に愛される郷土料理へ。今では“おふくろの味”として各家庭で受け継がれ食卓に根付いています。
コッテリとした鶏の旨味こそが、昔ながらの風味だという諸説もありますが、『ひさ倉』の鶏飯ではあっさりしつつも濃厚な旨味が後味に残る味わいを楽しめます。おひつからアツアツのご飯をよそおい、その上に細かく裂いた鶏肉と錦糸卵、しいたけ、ネギ、パパイヤの漬物、たんかんの干し皮、海苔、紅ショウガなどたっぷりの具材をのせ、地鶏のスープを注げばできあがり。
ここの鶏飯の決め手は、自家養鶏場で平飼いされた上質な地鶏をじっくり煮出した黄金スープです。鮮度を保つために、注文が入ってから土鍋に移し、提供する直前に醤油や塩で仕上げる徹底ぶりです。お茶漬けのようにスルスルと食べ進めることができるので、ご飯とスープがおかわり自由なのも嬉しいポイントです。
ほかにも「やきとり」や「地鶏手羽」といった鶏肉を中心とした料理が並ぶなか、店主イチオシなのが、さつま若しゃもを調理した「とりさし」です。鹿児島の本土では一般的には皮を炙ったものが提供されますが、『ひさ倉』では鮮度を生かして皮を処理し、そのまま生で提供されます。プリッとした弾力あるモモ肉やむね肉を、薄くスライスした自家製玉ねぎ、生姜やニンニクなどの薬味と一緒に堪能できる一皿です。地元の方々と観光客で賑わう広々とした店内で、鶏飯や新鮮なとりさしを心ゆくまで味わえば、奄美大島の食文化を体験できるきっかけとなるでしょう。
薩摩と沖縄の食文化が交じり合い、独自に形作られた奄美大島の郷土料理。この島を取り囲む海から獲れる豊富な海産物はもとより、香りや旨みが高い島野菜も豊富に使われ、食材そのものの魅力を引き出す料理が特徴です。
サッと塩で味付けられた料理から、サトウキビを原料とするミネラルたっぷりな黒糖で深い味わいを引き立てた料理、さらには伝統的な発酵食品であるミキやソテツ味噌まで、日々の食卓には滋養に溢れた料理が並びます。こうした食事文化の影響もあって奄美群島は、百寿者率が全国的にも高いと言われており“長寿の島”として知られています。
名瀬商店街にたたずみ、さまざまな調理方法で“シマジューリ”を提供する『郷土料理かずみ』は、夜な夜な地元の人々が集う憩いの場。代表的な郷土料理の油そうめんはもちろん、ソテツの種子を混ぜて作る伝統味噌・なり味噌で和えたゴーヤチャンプルー、その日に水揚げされた赤うるめの唐揚げ、奄美群島の伝統的な農作物であるハンダマのお浸し、パパイヤの漬物など、さまざまなあらゆる郷土料理を10品以上も堪能できます。特に正月に食べる習わしがある、適当な味加減で塩抜きした豚骨とツワブキの煮物は絶品の一品です。各料理について店員さんが調理方法から説明してくれるので、奄美の食文化を広く知るきっかけになります。
テキパキと厨房で料理を手がける女将の西和美さんはシマ唄の名人。ひとしきり食べたあとには、唄遊びが待っています。だいたい毎晩19時半頃からスタートし、常連の男性が三味線を奏で、お客はチヂンと呼ばれる太鼓を順番に打楽器隊として演奏します。シマ唄を静かに聴くのではなく、徐々に熱気を帯びるグルーヴを感じながら、本来の遊びを体験できます。
「毎日料理をして、シマ唄を歌うことが楽しくてしょうがないんです」と、女将さんは言います。地産地消が根付いた奄美大島で郷土料理を味わい、日々のストレスを吹き飛ばすために、いつだって陽気にシマ唄を歌う島人の心を体感すれば、美しさは暮らしの中にあることを実感するはずです。
離島のベストシーズンといえば夏を連想してしまうけど、誰だってひとしきり遊んだあとはサクッと涼みたくなります。島フルーツをふんだんに使用したジェラートを手掛ける『ラフォンテ』では、奄美大島の北部にある自家農園で栽培した無農薬の果実を使用し、その日にキッチンで手作りして販売をしています。ガラス張りの冷凍ケースには、奄美黒糖、マシュ(真塩)、ミルクをはじめ、その時期に収穫できる旬のものがラインナップされており、シングルからトリプルまでのサイズを選ぶことができます。これまで考案したレシピは300種類を以上もあるのだとか。
特に人気なのは、黒糖&マシュ&パッションフルーツのトリプルジェラート。手作りならではのざくざくした食感はもちろん、素朴な甘さと、南の島にきたことを想わせるエクゾチックな酸味が口の中でダイレクトに広がります。店主の泉久美子さんは、2006年にパッションフルーツを育てたのがきっかけで、作物の美味しさを伝えたいという想いからオープンしました。素材から引き出される自然の旨みを最大限活かすため、奄美の温暖な気候を利用し加温することなくビニールハウスで栽培しています。
農園を手掛けているからこそ原材料のフルーツは、色や傷によって流通にのらない規格外品も使用するそうで、たとえば酸味が少し強い場合でも、5〜6種類の砂糖を独自にブレンドしてバランスを調整します。素材を無駄なく使うことはエコな視点からもスグレモノ。「自分たちで汗を流し育てているからこそ、食べ頃を見極めて果実を選ぶことができます」と語るように、トロピカルな素材からあふれ出る自然の風味を生かした格別の味を求めて、今では多くの地元の人々や観光客で賑わう憩いの場となっています。
国や地域の数だけ多種多様なお酒はあれど、その地でしか製造できないものは珍しいものです。まさに秘伝とも言える最たる例が、奄美群島が誇る「黒糖焼酎」です。サトウキビの煮汁をギュッと凝縮したブロック状の黒糖と米麹を原料とする黒糖焼酎が生まれることになったのは、遡ること1953年、アメリカ統治下にあった奄美群島が日本に返還された歴史が深く関係しています。
日本の酒税法が適用されると、身の回りにあるサトウキビから作られる黒糖を原料とした蒸留酒は「ラム」に分類され、高い税率が課せられることになります。ただ、このような地理的背景があったこともあり、例外措置として米麹の使用を条件に法律上でも奄美群島でのみ製造が許されるようになったのです。
こうして先人の知恵とワザを紡ぎながら独自に発展した黒糖焼酎は、現在25の蔵元で製造を続けています。「復帰の歴史があったおかげで生まれた奇跡のレシピ」と語るのは『西平酒造』の4代目となる西平せれなさん。代表銘柄である「加那」や「ISLAND」を製造するかたわら、ミュージシャンとしても活動し従業員と音楽隊を結成して、樽で寝かせた古酒にジャズやシマ唄など様々な音楽を聴かせる新たな取り組みを行っています。伝統を守りながらも、ひとつのベストアルバムを作るように多様な黒糖焼酎を造ること。今年で70周年を迎えた黒糖焼酎の未来を担う女性杜氏は、今日も活動を続けています。
全ての蔵元の代表的な銘柄を中心に季節限定のものまで、64種類もの黒糖焼酎がズラリと並ぶのは、島の繁華街“屋仁川”の中心にある『島の居酒屋むちゃかな』。店内の木組みの壁面にライトアップされた黒糖焼酎を眺めれば、つい迷うほど豊富に揃っていますが、はじめの一杯こそ飲みやすいと評判の「加那」のソーダ割りがオススメ。スッキリとした黒糖の甘みが際立つように常圧蒸留で丁寧に仕込まれた逸品です。奄美の方言で“愛しい人”という由来に習って、家族や恋人と舌鼓を打つのも乙です。